ブラック企業を辞めたくても辞められない! どうすればいい? 認知的不協和理論のお話

2019年9月19日

「ブラック企業を辞められない……」なんて感じの本がちょっと話題になったことがあるような気がします。読んだことないんですけどね。

なら何故やめられないのでしょうか。「学習性無気力が……」「同調圧力がー」とか心理学みたいな感じの要因もたくさんあります。

かと思えば、「辞めたくても収入がなくなったら困るから」「社会の目が……」「年齢とかスキル的に転職は厳しい」っていう人それぞれな理由もたくさんあると思います。

私の前職の先輩は「仲間がいるから簡単に辞められない」と言ってました(仲間のいない私は辞めちゃったんですが)。

「辞められない理由なんてたくさんあるんだよ」っていうのが正直な結論なんですが、今回はその中でもブラック企業を辞められない大きな原因の一つとなる「認知的不協和理論」のことを書いていきます。

ブラック企業だけじゃなくて、DVとか関わっちゃダメな人につい関わっちゃうとか、「悪いとわかっているけどやめられない」的なところに大きく関わってきます(そもそも認知というものはいろんなところで大きな影響を与えています)。

いずれはカルト教団がよく使う手口とブラック企業の共通点とかの記事も書いていこうかと考えてます。考えてるだけです。

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新書より小説を読むことが多い私にとっては微妙でしたが、心理学やビジネス・自己啓発系の本が結構多かったので、そういうのを探している方にはとてもおすすめです!

そもそも認知的不協和理論って? ブラック企業と関係あるの?

認知とかそういうのは昔から多くの心理学者が研究しているのですが、認知的不協和の研究だとフェスティンガーが有名です。

私が持ってる心理学の教科書では以下のように認知的不協和理論の説明がなされています。

フェスティンガー(Festinger,1957)は、自己や自己をとりまく環境に関するあらゆる認知を視野に入れ、それらの間に生ずる矛盾や食い違いを認知的不協和(cognitive disonnance)と呼んだ。そして、認知的不協和の生起は不快な緊張状態をもたらすため、人はこれを低減しようとして認知要素の一方を変化させたり、新たな認知要素を加えたりするとした(池上,遠藤.p70.2006)

ちょっと何言ってるかわかんないですね。

具体例、というか実際の実験は下記のような感じだったそうです。

退屈な実験課題に従事した参加者が、はからずもその課題は面白かったと嘘をつかされたことにより、参加者自身の課題の面白さの評価も高くなることが示されている。(池上,遠藤.p70.2006)

まだわかりやすいですかね。本当は退屈だったけど「面白かった」と無理やり言わされたら、何故か「面白かった」と感じてしまう不思議な実験です。

実はブラック企業を辞めれらない人にも、これと同じようなことが起きています。

つらいし、楽しくないし、給料も安いのに夜遅くまで働かなきゃいけない。上司や先輩からの理不尽な扱いに耐え、怒られるしかない日々。お客様からのクレームも受けることも。毎日誰かに謝ってる。誰からも感謝されない。本当は仕事も会社も大嫌い……。

けど、こんなときにブラック企業にありがちな朝礼とか社長の話で「感謝」とか「貢献」とか「価値ある仕事」とか聞かされたり言わされたりしていると、自分の仕事も価値があるように感じてくるし、この仕事を通してだれかが感謝してくれたり、何かの役に立っているんだとだんだん思えてきてしまうものなのです。

思えてくるというよりかは、そういうふうに物事を捉え、考えようとしてしまう習性が人間にはある、といった方が良いかもしれません。

退屈な【仕事】に従事した「従業員」が、はからずも【仕事】は面白かったと嘘をつかされたことにより、「従業員」自身の【仕事】の面白さ評価も高くなる……。

引用文の"課題"を【仕事】に、"参加者"を【従業員】に置き換えてみました。これがブラック企業のやり方です。

ブラック企業のやり方として、何回も社訓や経営理念などを読ませたり、書かせたりします。認知的不協和理論の考えでは、ブラック企業で長く働くためには、このやり方ってとても理にかなっているのです。

ブラックな企業や仕事でも、それを大切だと思えてしまうのが人間、ともいえるでしょう。だから世の中うまくいっているんでしょうけど。

給与が低くても働き続ける理由の一つも認知的不協和に!?

長時間労働とかパワハラもヤバいですが、給与が低い会社もヤバいですね。手取りで一人暮らしできないぐらいに安いと目も当てられないことになります。

給与に不満があったらやめたいと思う人が多いと思います。でも、今の日本には貧困だとかワーキングプアだとか言われている人が一定数いるのが現実です。ちゃんと働いているのにサービス残業とかで実質の賃金が最低賃金を下回るような会社で働いている人もいます。

なんでその人たちは辞めないの? と思うかもしれません。これもまたいくつもの原因があってそうなってるのですが、これにも認知的不協和が関係してきます。

これも先ほど出てきた心理学者のフェスティンガーの実験で証明されています。

退屈な課題を面白いと嘘をつくことへの報酬が20ドルより1ドルの場合の方が、行為を正当化する必要が強くなり、態度変化が大きくなる。(池上,遠藤.p71.2006)

不思議なことに、報酬が少ないことを正当化する方向に、人間は考えてしまうのです。

「給与が低いのは自分がダメだから……」「このご時世そんなにいい給料のお仕事なんてあるわけない」などと考えて、転職したりすればもっともらえたりするのに、会社の給与の低さを受け入れてしまうのです。

そして、給与が低いこの会社で働きつづけることを正当化しようとしてしまうように考えてしまいまいます。

その結果「この仕事が誰かの役に立ってる!」とか「感謝されるから!」とか「成長につながる!」と考えてしまうのです。もっと誰かの役に立てたり、感謝されたり、成長する方法があるかもしれなくても。

これがブラック企業から抜け出せない人がでてきてしまう仕組みの一つです。

認知的不協和の罠から抜け出してブラック企業と関わらないようにするには?

認知的不協和が関係しているため、ブラック企業をなかなか辞められないと解説してきましたが、ではどうすればブラック企業をやめられるのでしょうか。

一番の解決方法は、いろんな情報に触れるということです。多くの情報、ということでよりはいいことも悪いことも含めて様々な種類の情報を、友達や家族、インターネットや本などから集めるようにするのがいいでしょう。

とはいっても、ブラック企業やカルト教団が良く使う手口に、携帯などを使えないようにして朝から晩まで研修を行い、外部との情報を遮断したり、取れないような状況を作ります。

他にも、「あいつらは間違ってる! 私が正しい!」「他の奴らは嘘を言ってる! だまされるな。他の人のいうことを聞いてはいけない!」などと言って他の価値観や情報との関わりを断ち切らせるようなことをいう人もいます。

こういうときは、そんな研修をさせられたり、言われた時点で、もうこの人たちとこの会社はブラックなんだと思うようにしましょう。こんなカルト教団の洗脳の手口みたいなことを平気で従業員にしてくる会社は早く辞めたほうがいいです。

もう一つは、辞めても何とかなる、と思うことです。当たり前ですが、ブラック企業に勤め続けられる人はすごい人です。そんなすごい人なら辞めたって次の転職先もすぐ見つかるでしょうし、生きていけなくなるようなことはないはずです。

まとめ

ブラック企業を辞められない原因はいくつもあります。いずれは他の心理学的要因についても触れていきたいとかなんとか思っています。

一番大切なことは、人生何とかなる! って思うことなのかもしれません。自尊心や自己肯定感、自己効力感については最近様々な研究がおこなわれています。

仕事やキャリアに関してもネガティブな気持ちではなくポジティブな気持ちで考えたほうが良いでしょう。

参考文献

株式会社サイエンス社 「グラフィック社会心理学 第2版」 池上知子,遠藤由美 著 2006